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私ではなくキリストⅣ

「私は、神に生きるために、律法によって律法に死にました。私はキリストと共に十字架につけられました。もはや私が生きているのではなく、キリストが私のうちに生きておられるのです。」(ガラテヤ2:19-20)

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私の杯――十字架の閉じ込め(1)

『私の杯』、益田泉著を読みました。彼女はクリスチャンの女性で、第二次世界大戦終了後に、大連で通訳として働いていたところ、ソビエト・ロシア政府によって 不当に逮捕され、当時のソビエト刑法第58条6項(国家転覆罪、スパイ容疑。本来はロシア国民でない外国人に適用されるはずのない法律)により有罪とさ れ、政治犯として最長の二十五年の刑期を言い渡されて、シベリアの強制収容所に流刑されました。

日本にも、いわゆるラーゲリ文学と呼ばれているものがあります。それは主に、戦後、シベリア抑留された日本兵たちが、帰国後、ソビエトのラーゲリ(強制収 容所)で経験した生活をつづったものです。その多くは想像を絶する苦しみと悲惨に満ちています。しかし、中でも、民間人の女性のラーゲリ経験者、しかも信 仰によって強制収容所生活を耐え抜いたクリスチャンの手記となると、極めて希少であると思います。

数年前にこの手記の存在を知って以来、読む機会が得られないかと願ってきました。私はかつて、ラーゲリに関する手記をいくつか読んできていたので、彼女の 告白には、他の手記と多くの点で重なるものを見ます。ソビエトのラーゲリ(取調べの間留置される監獄と、刑期が言い渡された後に送られるシベリア全土の強 制収容所)の生活環境は、人間にとってまことに耐え難いものであり、人間以下の暮らしと呼んだ方がよいものでした。文明が最高度に発達した20世紀にも なって、人類のユートピアを建設すべく作られた社会主義国家で、数え切れないほどの無実の人々が、シベリアの僻地の極寒の中に送られ、これほど無益な卑し い最低の暮らしを送らねばならないとは、誰が想像したことでしょうか。(まことに文明という人間の知恵は人間を欺き、幸福に導かないのです。)

さらに、益田泉さんは小児麻痺のために左半身が不自由でした。外見だけを見るならば、彼女はまさに薄幸の女性としか言えないでしょう。最初の許婚は病死、 遅くに結婚するも、大連で夫が召集され、身ごもった初めての子供を失い、女性としての家庭的幸福は取り去られます。その上、さらに人生で最も活躍できるは ずの充実した時期に、ソビエト・ロシアの不当な逮捕が彼女の身に及びました。四年間のソ連生活をやっとの思いで終えて帰国してみると、夫はすでにソビエト の捕虜としてかの地で亡くなっていました。

彼女の手記には、ラーゲリを経た全ての人が体験しなければならなかったつらさがつづられています。突然の逮捕、家族から引き離され、監獄で尋問される圧 迫。かつて親しくしていた神父が裏切って虚偽の密告をし、そのロシア人神父と獄中で対面させられる場面。無実にも関わらず、法廷で懲役二十五年の有罪判決 を言い渡された時のショック、茫然自失の状態での護送…。零下五十八度の極寒の中での労働、針一本所有できない収容所生活…。ラーゲリの環境については幾 度も読んできた私にも、改めて、胸に迫って来るものがあります。

しかし、彼女は多くの人が精神的にも肉体的にも倒れていくような過酷な環境の中を、クリスチャンとして、神を信じる信仰だけを頼りに、愛をも希望をも失わ ず、生き抜きました。しかも、「イーラチカ」と呼ばれて他のロシア人の囚人たちからも慕われ、信用されるようになります。彼女はソビエト国民も含めて、誰 をも憎むことはありませんでした。密告者が横行し、互いに非人間的扱いが当たり前となり、誰もが極度の飢えと貧しさと寒さを耐えて暮らさなければならず、 誰も信用できない、悲惨なラーゲリという環境にあって、そんな風につつましく朗らかに誠実さを失わずに生きた日本人女性がいたとは! もしも私ならば、彼 女のように生きることができるかと、自問せずにはおれませんでした。誰をも憎まず、罵らず、もちろんのこと、盗まず、嘘をつかず、自分の持っている乏しい 持ち物さえ喜んで人にやってしまうほどに、人を愛し、人を助けながら、キリストの香りを放つ人として生きた証を立てられるでしょうか? 

…そう考えてみると、ただ主が私を憐れんで、多くの惨めな欠点を今も愛によって覆って下さっていること、私が信仰者を名乗ることができるのは、ただ主の憐れみのおかげであることを思わないわけにいきません。
<つづく>
 
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